健康経営研究会

想定外が想定内に

想定外が想定内に

想定外が想定内に

経験したことのないまたは想像の域を超えるような事象が発生した時、 それは、おそらく私たちの頭の中で考えられなったこと、 または、私たちが考えられる範囲を超えていたので、「想定外」である、 判断することになります。今までの経験のみで、自分自身の思考に城壁を作ってしまい、 その中から出れないように自分を守っているのかもしれません。 まさしく適応障害を予防する防衛反応なのでしょう。

しかし、現代社会は、もはや想定外はなく、何が発生しても受け入れ なければなりませんし、発生することを予見しなければならなくなり ました。。地球温暖化などによってもたらされる自然現象の異変もま た、私たちの地球環境を従前のように維持することができなくなった からでしょう。地球のレジリエンスが喪失したとき、それはもはや現 状復帰が不可能となってしまいます。想定外にならないようにするが、 私たちの英知です。

もう一つの考え方として、ある事象は、複雑な要因が絡み合って発生す るという考え方、syndemicがあります。パンデミック対策は、感染ルー トを遮断することで、感染防御が可能となりますが、一方、重症化につ いては、NCD(Non Communicable Disease;非感染性疾患)を日ごろから 対処しておくことが必要となります。また、貧困などの格差もまた重症化 要因となります。例えば、メタボリック・シンドロームは4つの要因が含 まれていますが、それぞれ単独では生命を奪うものでなくても、2つ、3つ と重なっていくと致命的な疾病を発症させることになります。一つのこと だけに目を奪われていると、水面下の動きが察知できず、実は大変なこと が起こりうる時代になっています。逆に、一つひとつの改善の積み重ねが 想定外を予防する要因になりうる可能性があります。

さて、健康経営は、経営利益と従業員の健康の両立を目指していましたが、いよいよ次のステップに進むことになりました。健康経営、次のステップは、その利益を創出の仕方が倫理に基づいているかどうか、という課題をクリアすることです。倫理資本主義は果たして、現代社会で成立するのでしょうか。企業も、従業員も社会もすべてよし、という社会は成立するのでしょうか。それは、ユートピアでしょうか。次から次へと立ちはだかる社会の発展を拒む障壁の一つがCOVID-19でしょう。しかし、その障壁は私たちが自ら生み出したものかもしれません。生命か社会経済か、一つを選ぶことはできません。両立できる社会基盤を作らなければならないのです。人は、社会という大きな空間に生きていますが、これからは自分の内なる空間に社会を包含して大切にすることも重要になってきました。次は、健康長寿と企業経営と豊かな社会の3つがお互いに支え合う社会を構築しなければなりません。