健康経営研究会

withコロナ時代、答えのない事態につきあっていく力やレジリエンス

withコロナ時代、答えのない事態につきあっていく力やレジリエンス

医療面・経済面において、世界中が新型コロナウイルス感染症で苦し んでいます。 しかしながら、今のところ明るい兆しはあまり見えていません。我々 はこれからもいろいろと模索しながら、新しい生活様式を実践してい くことになりますが、『これが正解』というのが見えない時代、まさ しくVUCA*の時代を生きていくことになります。

ネガティブケイパビリティ

精神科医の帚木蓬生先生の著書によれば、問題を性急に措定せず、未 解決問題に早急に回答を見つけず、宙ぶらりんの状態を回避せず、持 ちこたえ耐え抜く力(ネガティブケイパビリティ)は、詩人ジョン・ キーツがシェイクスピアの持つ「無感覚の感覚」に気が付いたことか ら、この世で初めて口にしたとあります。どうにもできない状態をネ ガティブケイパビリティの力で持ちこたえていくうちに、状況が好転 していく…ネガティブケイパビリティは今の時代にはとても重要な力 であると思われます。

「わかろう」とする脳と不安

ヒトの脳は、出来事に出くわすとそのことを、ともかくその状況を 「わかろう」とする傾向があるそうです。脳が悩まなくても済むよう に、「わかる・わかりやすくする」ための究極の形がマニュアル化で す。現在社会の必須アイテムでもあります。マニュアルに慣れ切った 脳はマニュアルにない事態が起こったとき、つまり「わからない」こ とが起こると「不快」・「不安」という感情が沸き起こります。

「わかる」の基盤には、記憶が必要であり、それが知識として蓄えら れます。よって、多くの経験をすれば、多くの記憶が獲得でき、「わ かる」は増えてくると思われますが、新型コロナウイルス感染症は 「わからない」事象の1つです。経験が少なくまた、1人暮らしの従 業員はこの「不快」・「不安」な気持ちがより増幅するかもしれませ ん。また、在宅勤務制度も浸透してくる中、職場のコミュニケーショ ンも変容しており、産業医としても、職場でのメンタルヘルス不調者 の相談を受ける機会が増えています。

社会生活を送る上で、これからも「わからない」ことが溢れており、 見通しが立ちません。対話は、自分を取り巻く不安定な要素を軽減し てくれます。まずは、職場における対話を常に心がける(わかるコミ ュニケーション;健康経営における第3軸)ことが重要です。そして、 各々が持続可能な自分なりの「楽しみ」「安らぎ」を積極的に見つけ ていき、組織としてレジリエンスが高い人財の育成が求められるので はないかと考えます。withコロナ時代、力を合わせて、乗り切ってい きましょう。

*VUCA 
Volatility(変動性:変化が予測不能のパターンをもつこと)
Uncertainty(不確実性:問題や出来事の予測がつかないこと)
Complexity(複雑性:多数の原因や因子が絡み合っていること)
Ambiguity(曖昧性:出来事の因果関係が不明瞭で前例もないこと)