
「イクメン」から「共育(トモイク)」へ
手元に1枚の卒業証書がある。
そこには、「貴殿はP社主催の『男のための育児大学』の講義実習を熱心に受講、育児の大切さを充分に認識されました。依ってここにその全講程を終えられたことを証します」と記されている。長男が生まれて2ヶ月半が過ぎたころ、今から50年近く前に受け取った卒業証書である。
育児介護休業法が改正され、産後パパ育休(出生時育児休業)の制度が始まって4年近くが経過した。「イクメン」という言葉が新語・流行語に選ばれた2010年当時わずか1.38%であった男性の育休取得率が、ここ数年飛躍的に向上し、2020年に初めて10%を超えたのを皮切りに、2023年が30.1%、2024年が40.5%と増加の一途をたどっている。
わが国では、1989年のいわゆる1.57ショック以降少子化対策の一環として様々な子育て支援策が講じられてきたものの、その効果は極めて限定的で、合計特殊出生率も低下傾向が続いている。
言うまでもなく、子育て支援の充実は、少子化対策の一環としてのみならず、私どもNPO法人が提唱・推進しようとしている「健康経営」を下支えするワークライフバランスの確保という点でも、大きな意義を有する。
そして、少子化対策、子育て支援の充実という流れの中で、とりわけ男性の育児への参加は重要な意味を有しているものである。
最近の調査においても、「育休を取るなら辞めてもらう」、「育休を取ると次の昇進はない」などといったハラスメント(パタニティーハラスメント)の被害を訴える男性が未だ後を絶たない状況のもと、国は、男性の育休取得の促進を図る官民のプロジェクト名を、2025年7月、「イクメン」から「共育(トモイク)」に変更した。
これは、男性の育児参加を「イクメン」と呼んで特別視する時代とは決別し、「共育」が当たり前と考える時代に入ろうとしていることを意味するものである。
いわゆる性別役割分担意識を解消し、男女ともに育児、家事に関わり、これを楽しむ。
半世紀近く前に「男のための育児大学」の卒業証書を受け取った身としては、「イクメン」から「共育」への名称変更には、特別な想いを抱かずにはいられない。
2026年5月
副理事長 山田 長伸



















