健康経営研究会

メンタルヘルス不調

メンタルヘルス不調

メンタルヘルス不調者をめぐる職場でのトラブル事例が、増加の一途をたどっています。

一方では、メンタルヘルス不調者の数自体が増えているのですから、それに比例して職場でのトラブル事例が増えても、何ら不思議ではないということかもしれません。

しかし、日頃人事労務担当者からトラブル事例に関する相談にあずかっている弁護士の立場からしますと、職場の上司なり、関係者が多少の法律知識を持ち合わせていたなら、容易に防げたのではないかと思われるトラブル事例も、その中には数多く見受けられます。

例えば、明らかに過重労働(長時間労働等)によってメンタルヘルス不調に陥った従業員に対し、私傷病休職に関する社内規程(就業規則)を適用し、同規程の定める休職期間が満了しても職場復帰が見込めないとの理由で、解雇(休職期間満了に伴う解雇)を申し渡したため、当該従業員との間で解雇をめぐってトラブルに発展したといった事例がその典型例として挙げられます。そして、そのような事例に関しては、労働基準法第19条第1項本文の存在を理解しておく必要があります。すなわち、労働基準法の規定によれば、「使用者は、労働者が業務上・・・・疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間・・・・は、解雇してはならない。」とされ、いわゆる業務上疾病により療養中の者に対する解雇制限が法律上定められているのです。その結果、上記のような事例が生じた場合には、そもそもメンタルヘルス不調が業務上疾病に該るのか、それとも私病に該るのかが、ポイントになるわけです(過重労働によることが明らかな場合には、そもそも私傷病休職の規定を適用すること自体が誤りということです)。

無用のトラブル事例の発生を防ぐためにも、常日頃より法律の規定に少し目を向けてもらえればと願っています。